紅茶農園主のブログ

ステッキの小径

2021年1月27日

(備北民報 2011年4月19日掲載の連載エッセイ「紅茶の丘の物語(第6回)」より加筆修正したものを掲載します)

斜面に位置するため、平坦地は貴重。中央の広場はスコップで少しずつ平(たいら)にしました。(現在の春の様子)

※このエッセイはちょうど10年前に連載したものです。今の英国庭園は写真のように少しずつ形ができてきました…。でも、まだまだ完成には程遠く、時間をかけながら少しずつ完成に近づいています。今日のエッセイは数字に10を足してお読みください(笑)

 6年前の春、小さなスコップで小道をつくりました。ジョレンで土を取り除き、芝生を張りました。小道の先には平坦な土地を削り出し、ここにも芝生を張りました。それから年を経るたびに少しずつ庭をつくってきました。原野の形をそのままに上ったり下ったりの庭です。草やツル性植物がはびこる土地で花を植えても、木を植えてもどこに植えたのかすぐにわからなくなりました。

 それでも頭の中では「そこはローズガーデンにしよう。ここはハーブを植えよう。こちらにはベンチを置こう…」などと英国庭園を夢見ながらスコップで土を掘りました。他県のテレビ局の取材で草が生い茂る小道を歩きながら「ここが英国庭園になる場所です!」と説明したら大笑いされたこともありました。確かに5年前のあの状態じゃあ笑うよね…。

 4年前には小さなアーチのトンネルをつくりました。昨年の春には、小道に階段をつくって少しだけ道を歩きやすくしました。人力で土を掘るのも限りがあって、春を過ぎ梅雨の時期になると庭仕事もおしまい。忙しくなるシーズンを前に外仕事ばかりする余裕はありません。「今年もここまでか。また来年続きをしよう」などと言いながら手にはスコップから草刈り機が握られています…。

 今年の春、アーリーモーニングの英国庭園は少しにぎやかです。スコップで手掘りしていたところに砂利が敷かれ、ベンチを置くための広場も。そして一番高い丘の上にはレンガを敷いた可愛いローズガーデンが出来上がります。

 小さくても物語(ストーリー)のある庭々を巡る小さな旅。その小さなコーナーを結ぶのに必要なのが小道です。「散歩する庭」では心地よく歩き汗をかく。だからこそ紅茶がより美味しくなります。今まで家族で手づくりしてきた庭がやっとお客様をお迎えし、紅茶と結びつくことができる庭へと変わっていきます。紅茶の丘に、新たな物語が始まりました。散歩する小道の名前を「ステッキの小径」にすることに決めました。庭づくり6年目の春です。