今日は終日、「英国庭園へと誘う小道」の工事がお休みだったのでお庭と歩くをテーマに書いた新聞連載エッセイを掲載します。今から10年前! もうあれからそんな時間が経つのかと驚きです。庭の風景も少しずつ充実してきています。今年の春から初夏にかけても美しい花と木々の緑に癒されたいと思っています。
(備北民報 2011年6月14日掲載の連載エッセイ「紅茶の丘の物語(第12回)」より加筆修正したものを掲載します)
「何人(なにびと)も散歩をする権利を有する。散歩することによって幸福になる権利を併せ持つ…」って、そんな権利が本当にあるの?
散歩という言い方はしませんが、イギリスには昔から通行権(通称、歩く権利)という法律が規定されていました。1949年のことです。地主さんや自治体などが認めたルートであればだれでも自由に歩くことが許されておりました。その後紆余曲折あったのち2000年に散策権という権利が新たに設定されました。歩く権利に基づいて国中に設置されているのが有名な「パブリックフットパス」です。総延長24万キロ(地球6周分)もあるそうです。散歩を楽しむ道が国中に細かく指定されていて、誰でも気軽に自然や歴史に触れながら過ごすことができるって素敵ですね。ただし、この道には車やバイク、自転車などは一切禁止です。もちろん馬車も。国民に人気がある趣味の第一位が園芸。第二位にウォーキング(つまり散歩)が選ばれる国ならではですね。
私の理想とする紅茶の世界でも「散歩」はとても大切。散歩をして気分をリフレッシュし、美味しい空気を一杯吸って花やハーブの香りを楽しむ。そして歩き疲れて喉が渇き紅茶を飲む。これぞ至福のひと時。この一杯の紅茶のためにアーリーモーニングの英国庭園に必要だったのが「ステッキの小径(こみち)」と名付けたレンガの道でした。庭は道が中心だからこそ一層魅力を増すのだと思います。散歩も紅茶もひとつの文化です。そのうち「紅茶を飲む権利」なんてできたりして。あっ、既に慣習として認められておりました。