4月9日、エリザベス女王の夫フィリップ殿下が99歳で死去されました。英国史上最も在位の長い69年の間、エリザベス女王を支えてこられました。コロナ禍での状況を鑑み、国葬とはしないとのことです。その中でロンドン塔やタワーブリッジには半旗が掲げられた。ウィンザー城やバッキンガム宮殿などで市民が追悼の花を捧げたそうです。謹んでご冥福をお祈り申し上げます。
(備北民報 2012年6月26日掲載の連載エッセイ「紅茶の丘の物語(第54回)」より加筆修正したものを掲載します)
このところ、テレビでは連日英国に関する特集や情報を目にすることができるのでとてもありがたい。またしても英国ブーム到来かと思いきや、もうじきロンドンオリンピックなんですね。ああ、なるほど。そういうことかと納得。
今年の英国は大きなイベントが一杯ですが、そのなかでもエリザベス女王の戴冠60周年というのは別格。全国でお祝いがなされました。国民と女王陛下(王室)の良好な関係が特にクローズアップされたことはとても素晴らしいことでした。60周年という節目は日本では還暦。ヨーロッパではお祝いにダイヤモンドを送る習慣があるので、ダイヤモンドジュビリーと呼ばれます。写真のティーキャディーは(紅茶保存缶)イギリスのアンティークマーケットで見つけたもので、エリザベス女王がエジンバラ公とご結婚されたときの記念に発売されたものです。1947年のことですから65年前のものです。お二人の仲の良さは有名ですが、今から100年少し前のヴィクトリア女王も仲むつまじいご夫婦として国民から愛されておりました。母として子どもを育てる姿勢が、当時の新聞に盛んに報じられ、国民の模範と賞され尊敬されました。1897年には戴冠60周年を記念して盛大なダイヤモンドジュビリーが催されました。しかし、夫君のアルバート公は若くして腸チフスが原因でなくなられました。それからは女王から笑顔が消えてしまい、女王に笑顔が戻りますようにと供したのが前の「ヴィクトリアサンドイッチケーキ」でした。造りは至ってシンプルです。同じ大きさに焼いたバタースポンジケーキの間にラズベリージャムをはさみ、表面には粉砂糖をまんべんなくかければ完成です。現在のケーキと比べるととても簡単で味も単調ですが、英国の人はみんな大好きなのです。紅茶との相性もとてもよく、115年前も先日のダイヤモンドジュビリーでも国中でこのケーキを焼いて食べました。因みにエジンバラ公はヴィクトリア女王の曾孫(ひまご)でした。年月に関係なく、女王の幸せを祈る国民は今も昔も変わらないのです。