(備北民報 2012年9月4日掲載の連載エッセイ「紅茶の丘の物語(第62回)」より加筆修正したものを掲載します)
「ロンドンの町並みを正確に知る。これも僕の趣味のひとつでね、あそこはモーティマーの店。次は雑貨屋、それから都市郊外銀行のコバーグ支店だ。マクファーレン馬車製造工場の倉庫もあるぞ」これは、ご存じシャーロックホームズの冒険に収録されている「赤毛連盟」の中での会話です。この短編集は1891年に発表された、ヴィクトリア朝時代のロンドンを舞台に友人のワトソン博士と二人で難事件を解決していく物語です。今から百数十年前のお話ですが、そこに登場する地名、通り(ストリート)の名称、建物などが今でもほとんど同じ場所に同じ形で残っているのには圧倒されます。ヴィクトリア女王の時代は産業革命以後の流れの中で工業が発展しました。農業の分野でも農薬や肥料、農機具が飛躍的に発達していくという実に華やかな英国のもっとも優雅で反映していた時代だったといえるでしょう。
さて、先日の倉敷での紅茶教室ではオリンピックにちなみ、ロンドンの町を歩くというカリキュラムを組んでみました。地図を机に広げ、先ず滞在するホテルを決める。地下鉄の駅に近い方がよいでしょう。朝一番に毎日市内のあちこちで開催されるアンティークマーケットへ出向き、昼間は美術館へ。午後はアフタヌーンティーを堪能し、夕方には店は閉まるのでテムズ川に沿って散歩を楽しみましょう。夜は劇場で観劇。こうやって約一週間のバーチャルなロンドン旅行を計画しました。ロンドンの面白いところは現代の旅行だけでなく、百年前のシャーロックホームズの歩いた道を同じように歩くこともできるというところです。ロンドンオリンピックのマラソンコースで話題になった石畳も300年前から変わらずそこにあったりするのですから。
そこで再び赤毛連盟の物語へ。「私がその夜、家を出たのは9時15分過ぎであった。ハイド・パークを抜けて、オクスフォード街からベーカー街へ曲がってみるとホームズの家の前には二輪馬車が止まっていた」さて、地図を広げてこのとおりの道順をを歩いてみましょう。ロンドンは何百年前の時代にでもタイムスリップすることができる不思議な町なのです。(上の地図のあたり)
コロナ渦において、まさかバーチャルじゃないと海外旅行ができない! こんなことが本当に起こるとは…原稿を書いた9年前には想像もできませんでした。今は1日も早いコロナ収束を願うのみですが、安心安全な旅行の企画や対策を講じて楽しみたいものですね。アーリーモーニング でも、お客様が蜜にならないようテーブル席を減らし、定期的な寒気、空気清浄機の常時稼働、消毒、マスク着用のお願いなどを徹底しています。春はもう間近まできています。今年の春もお庭へお客様をお迎えできるようそろそろ土に向かおうかと思っています。