(備北民報 2013年1月8日掲載の連載エッセイ「紅茶の丘の物語(第77回)」より加筆修正したものを掲載します)
新年あけましておめでとうございます。家族とともに新年を迎えた方、遠来より帰省された家族親戚と久しぶりに再会された方もいらっしゃるのではないでしょうか。新年最初の「紅茶の丘の物語」はこうして新年にみんなが集まってともに祝う席で飲まれた紅茶と中国茶の白茶をご紹介しようと思います。紅茶は茶葉を発酵させてつくる発酵茶なのですが、白茶(はくちゃ、しろちゃ)は緑茶を少しだけ発酵させた微発酵茶です。両者に共通するのは、針のように細長い芯芽(チップとも呼ばれる)の部分のみを使っていること。葉っぱを使わないので収穫量が極端に少なく、貴重なお茶なのです。茶摘みのなかでも最も手をかけた摘み方は「一芯二葉(いっしんによう)」摘みといって、針のように細長い芯芽とその下の若葉2枚を手で摘み取ります。現在では高級な一部の煎茶や紅茶などに用いられています。ところが今回紹介する紅茶は芯芽のみを手摘みしたものでさらに手が掛かり、とても珍しいものです。その昔、秦の始皇帝がこよなく愛飲したといわれる「銀針白毫(ぎんしんびゃくごう)が特に有名で不老長寿の妙薬といわれていました。紅茶の芯芽は発酵しているので色が濃く「ゴールデンチップ」と呼ばれるのに対し、白茶の新芽は微発酵なので色が白っぽく「シルバーチップ」と呼ばれます。どちらも味は淡泊です。飲むというより、蒸らしている状態を楽しむといった方がよいかもしれません。中国では、お正月やお祝いの席で写真のようにグラスに入れてゆっくりと葉の動きや水色(すいしょく)を楽しむそうです。グラスの湯の中を上下する芯芽はまるで、じゅん菜のように見えます。抽出時間は、できれば12分間は蒸らしたいところです。紅茶の赤色と白茶の白色の両方を同時に入れてみると、紅白の実にめでたいお茶になります。飲むだけでなく、見て楽しむというのは少し驚きですね。こうやってみるとお茶の世界は実に奥が深いものだと思います。
最後に今年の抱負を。紅茶農園の充実とさらに研究を重ねてより美味しく魅力溢れる紅茶づくりに取り組みたいと思います。今年も紅茶道に邁進(まいしん)して参ります。
※2021年のお正月は、残念なことに皆で集うこともままならない状況下でありました。どうか春から夏と進む季節のなかで、少しでも笑顔で楽しく過ごせる時がやってきますように! そしてみんなで集まっておいしい紅茶が楽しめますように! 祈るや切!