紅茶農園主のブログ

朝食こそ人生なり

2021年1月12日

紅茶はもちろん、これぞ朝食の王道「イングリッシュ・ブレックファースト」

(備北民報 2014年8月19日掲載の連載エッセイ「紅茶の丘の物語(第156回)」より加筆修正したものを掲載します)

 「美味なるもとを食したくば、朝食を三度とるべし」これは英国のことば。今もすべてがこの通りであるとは申しませんが、やっぱり朝食の素晴らしさはいかにも英国らしくて素敵です。最近はホテルでもコンチネンタル方式の朝食が一般的のようですが、別料金を支払えばちゃんとイングリッシュブレックファーストも用意されています。英語で朝食とは「ブレックファースト」といいますが、語源はfast(断食)をbreak(中断)するという意味。昨日の夜から朝まで断食していたので、今日最初の食事である朝食をそう呼ぶようになりました。

こちらは厚切りベーコン主体にマッシュルーム、焼きトマト…ワンプレートの美学!

 最初にオレンジジュースを飲み、オートミールかコーンフレークにミルクをかけて食べましょう。ただしこれらは元々アメリカ式のものなのでパスしても構いません。いよいよ本番です。たっぷりの油がのった厚切りのベーコンをどうぞ。代わりにハムやソーセージでも可。肉料理の代わりに魚という選択肢もあって、ニシンの薫製もあります。キッパーという、2枚に開き内蔵を取り除いて塩をふりかけ薫製にしたものか、ブローターという開かないでそのまま塩水につけてから薫製にしたものの2種類あります。そして卵料理。オムレツや目玉焼き、ゆで卵など個人で好きなものを選ぶことができます。更にお好みの焼き加減をリクエストすることができるのでしっかりと伝えましょう。これじゃなきゃ駄目だって! 特に目玉焼きの焼き加減とゆで卵のゆで加減にはうるさい人が多かったようです。因(ちなみ)に、007ジェームズボンドのお好みのゆで時間は3分30秒。ゆで卵の黄身はクリーム状が基本。でないと一日不機嫌。付け合わせは焼きトマトにマッシュルーム、インゲン豆などの煮込みなど。あとは揚げパンかトーストに紅茶とくれば最高よ。ポイントはこのおかず達を一皿に盛りつけること! ワンプレーとの潔さとでも申しましょうか。何でも一皿に盛っちゃうのが英国流。フランスやベルギーの美食家達にはショックらしく、英国推理小説家のアガサ・クリスティーはロンドン警視庁のジャップ警部が美味しそうに食べるワンプレートの朝食をうんざりする顔で眺める名探偵ポアロ(ベルギー出身)を面白く描いています。