紅茶農園主のブログ

36番「リンツ」

2021年1月9日

36番「リンツ」のLPコレクション。大好きなスイトナー2枚、ワルターが2枚、他にもあるが見つからない…(汗)スイトナーは予備にもう一枚ずつ持っている…(自慢にならない)

1992年、東京上野にある文部省の「国立社会教育研修所」に入所していた頃のお話です。当時、教育委員会から社会教育主事の資格取得のため長期研修に出向させていただいておりました。松戸にある通称、国社研松戸寮から常磐線で上野まで通っておりました。ある日曜日、思い立って上野にある旧東京音楽学校奏楽堂で開かれた都民コンサートに行きました。確かチケット三千円ほどだった。明治23年(1890年)に建築された建物で木造のとても重厚な空気が漂うような、凛とした空気が漂うような…それでいて、モダンというか、いやむしろエレガントなという表現がぴったりかな。そんな空間に舞い込んで少々緊張しておりました。

ちょうど都民コンサートが開催される日の予定が何もなかったので、一人で朝から寮を出て上野駅へ。そういえば、吉田秀和さんのエッセイにもウィーンから帰国後、上野駅で友人と落ち合ってコンサートへ向かったという話があったなぁ(笑)おんなじじゃが(岡山弁)。などと呟きながら上野公園を歩いておりました。

お目当ては、演目にあったモーツァルトの交響曲第36番「リンツ」。なかなか間近で聴く機会もないので、こんなチャンス滅多にない。35番「ハフナー」36番「リンツ」38番「プラハ」の3曲は39番、40番、41番のいわゆる三代交響曲とはまた違う魅力があって聴くと落ち着くのでLPレコードは手放せない。特に「リンツ」はウィーン交響曲と呼ばれる曲のひとつでやっぱり優雅で上品で気持ちが和らぐよう。モーツァルトはハイドンに影響を受けていたので、優雅というよりはハイドン風の素朴さが際立つ…というような表現をされる評論家の方もいて「うーん。素朴とはなんぞや?」と思って、ハイドンを聴いてみたりしたこともあるけれど、この3曲はやっぱり優雅で上品で柔らかさと気品に満ちていると思ってしまうんですなぁ。

奏楽堂はそんなに広いわけでもなく、このスペースで「リンツ」演奏するの? なんて思ったことを思い出します。知らぬとは恐ろしいもので、演奏が始まるやあまりの美しい音に感動して第4楽章まで一気に聴き入ったのでした。演奏は素晴らしいもので、たしかN響の演奏だったように記憶しています。そして、第2部では有名なオペラ歌手の岡村喬生(おかむらたかお)さんの演奏に合わせての詩の朗読やお話もありました。とても嬉しくて、今でもその時のドキドキした気持ちを思い出します。会場を後にしての感想は「3千円で毎月こんなコンサートを当たりめーに聴いてる東京都民にはぜってー勝てねーわ(岡山弁)」でした。それ以来、リンツを聴いたり岡村喬生さんを雑誌やテレビ番組などでお見かけすると奏楽堂の興奮が思い起こされて懐かしい思い出にドキドキしたものです。

今朝、新聞で岡村喬生さんの訃報を知りとても残念で悔やまれます。でも、あの素晴らしい感動を頂けたことは20代後半の僕にとっては本当に幸運だったと思っています。ありがとうございました。1992年の2月。29年も前のことです。