紅茶農園主のブログ

ティーカップの取っ手

2020年12月22日

(備北民報 2013年1月22日掲載の連載エッセイ「紅茶の丘の物語(第79回)」より加筆修正したものを掲載します)

ティーカップについている取っ手。ハンドルとかグリップなどということもあります。今回のテーマはこの取っ手は一体いつくっついたのか? そもそもティーカップという食器はいつできたのか? 寒い日が続く冬に温まるお話をしてみましょう。

この世の中には元々ティーカップなどという食器はありませんでした。茶の輸入を始めてから中国や日本で飲み物を飲むために使えそうな道具と言えば、あったのは大きく分けると湯呑みと茶碗。さすがに茶碗で飲むのはあまりかっこよくありません。そこで湯呑みということになるのですが、ヨーロッパ人が東洋へやってきて「茶」を知り、自分たちの国で飲もうとしたときに茶器も一緒に持って帰りました。だから、ヨーロッパで最初に飲まれていたティーカップは湯呑みでした。これを「ティーボウル」と呼びました。主に中国から輸出されたので、当時の食器類はチャイナと呼ばれました。日本も輸出してたのにね。ジャパンとはいかなかった。そのかわり、イマリ(伊万里)と呼ばれる有田焼は現在もイマリで通用します。

紅茶は緑茶や珈琲などと比べてかなり熱くして飲むので、どうしてもカップが持ちにくい。親指と人差し指でカップを摘むようにして飲んでいる絵がたくさん残されていることからも、飲むのに苦労したことが伺えます。じゃあ取っ手をつけてちょうだいと中国の窯元に頼めばよかったのにねぇ。何で気がつかなかったのかねぇ・・・って、あなた、それをいっちゃあおしまいよ。

取っ手をつけたティーカップを重ねると写真のようになりますよね。取っ手がじゃまでうまく収まりません。これを17世紀から18世紀の外洋を帆船、汽船に乗せて100日を越える旅(帆船)をしてたわけだから、先ず割れます。ところが取っ手のないティーボウルは重ねても壊れにくく運びやすかったし、船の底に積むことでバラスト(おもり)にもなりました。だから輸入に頼っているおよそ150年間はアチチを我慢してティーボウルで飲むしかありませんでした。取っ手のついたティーカップの登場は18世紀に入りイギリスでボーンチャイナに代表される陶磁器産業が繁栄してからでした。