愛用の万年筆のひとつに、シェーファーというブランドの通称スノーケルと呼ばれるペンがある。特徴はなんといってもスノーケル方式と呼ばれる インクの吸引方式にあって、ニブ(ペン先)からニョキ〜ッと吸引管が伸びてくるんです。それでインクをチュ〜って吸ってお腹を満たす(笑)。まるでアイスティーを美味しそうに飲んでいるような…なんとも不思議な万年筆なのです。ペン先の管を伸ばしながらインクにつけて、尻軸を引っ張って一気に押し戻すとタンクにインクが吸引される「タッチダウン」と呼ばれる空気圧を利用したとても凝った方式です。利点は万年筆の軸までインクにつけなくても吸引できるからニブや軸が汚れない。だから手も汚れない。でも、本当はこの凝ったギミックが楽しいのでインクの吸引がとても楽しみであるという点がいちばんの利点かな。何回やっても楽しい。
シェーファーの色々なシリーズに、このスノーケル方式が採用は採用されていて、愛用のペンは「スノーケルサラトガ」といって製造年は1955年以降のもののようです。もう65年くらい前に製造された万年筆で当然僕より年上。ニブの感触と書き心地が柔らかくて僕好み。もうなくてはならぬ存在でした。その万年筆がとうとう壊れた! 壊れたというか、インクを注入してもすぐに空になってかすれちゃう。注入自体が楽しいのだから気にせず使っておりましたが、これはつけペンか? あまりの注入回数の多さにさすがに我慢できなくなって修理に出すことにしました。65年前の、しかもとうの昔に製造終了しているスノーケルを修理してくれるお店なんかあるのかな? 色々探しておりましたら東京のK万年筆店を見つけました。事情を説明してお送りしましたらあっという間に修理してくださいました。毎日使っていたので、すぐに戻ってきてくれて嬉しい限り。早速インクを注入してみると、今までとは全然違う軸を押し下げて注入するときのピストンの重い感触がいかにもインクを飲み込んでいますって感じでうっとり。修理箇所の説明とともに、これからも末永くご愛用くださいませとのメッセージに胸がジーンといたしました。もうダメかもしれないと思っていた万年筆を見事に再生していただけて感謝です。よくよく考えてみると「万年筆」だから生まれて65年なんて、まだ赤ちゃんなんだと実感。あと、9935年使える(笑)